六月大歌舞伎 夜の部

仁左玉コンビ

急遽チケットを譲ってもらえたので歌舞伎座夜の部観劇.値下げ価格だったので久しぶりの2等席、しかも花道近くというおいしい席.3等Aが定席、お金に余裕があれば1等というのがいつものパターンなので2等に座るのはこれが3回目くらい.頭上の2階席で視界が狭いというイメージがあってこれまであまりよい印象を持ってなかった.でも3階に比べりゃ役者の顔の見え方が違う.これに比べたら天井くらいなんだってなもんだ.
さて1幕目の鈴ヶ森は幸四郎染五郎親子共演.が、まったく興味なし.半分寝てた.


2幕目からはお目当ての仁左&玉共演の通し狂言曽我綉侠御所染』.『御所五郎蔵』は菊五郎芝翫コンビで見たが、その前の『時鳥殺し』はお初です.なぶり殺しにされる血だらけ玉さんの時鳥の儚げな様子と、玉さんの髪をひっぱり憎々しい笑みを浮かべながらいじめまくる仁左さんの百合の方.いやもう客席中が静まり返ってたね.すごいんだもん.意味なく残酷なところが江戸退廃歌舞伎っぽくてドキドキしちゃった.この後30分のご飯休憩だったけど、隣の女性が「ひどいじゃん!悪いのは男でホトトギスは悪くないのになんで?なんで?こんな後味悪くちゃご飯食べる気になれないよ」と憤慨してた.いや、でも、それを言っちゃあほとんどの歌舞伎が「ひどい話」でくくられちゃうんじゃないか.この話って残酷に殺される美女っていう趣向を楽しむものなんじゃないですかね.


続く御所五郎蔵も、前回は上演されなかった大詰の五郎蔵内腹切の場で五郎蔵と皐月がお互い自害するという悲しい結末.覚悟を決めた五郎蔵に締め出された皐月がいきなり戸をバリバリ壊して中に入っていくシーンで思わず客席からどよめき&笑いが.悲しい場面のはずなのにびっくりするわ.五郎蔵は尺八を、皐月は胡弓を弾きながら死んでいく.2人共うめきながら楽器を弾いてるのは想像以上にシュールだ.また仁左さんも玉さんもすごい熱演なの.美しい2人なだけにもだえ苦しむ様が絵になるわ〜.


先月の『暫』で歌舞伎の様式美に改めて感心し、今月は歌舞伎の持つ退廃的な美しさに酔った.なんといっても仁左さんと玉さんのコンビは見ていて楽しい.