通し狂言 『ニ蓋笠柳生実記』@国立劇場 

席に行ってみたら、なんとお隣が男の子3人でびっくり.どうやら兄弟3人で見にきたようで、一番上のお兄ちゃんがいっても高校1年生くらい、一番下の子なんてどうみても小学生.子供だけの観劇、しかも男の子、しかも歌舞伎ってことで「静かに見ていてくれるのかしら」って横目で観察してみたら、あらまあ、イヤホンガイド+筋書き+オペラグラスの3点セットまで揃えてやる気満々じゃない.
実際お芝居が始まってもうるさいどころか、たまにオペラグラスを構えて見入ってるくらい真剣な態度にびっくり.っていうか、そこまで観察してる私も私だけどさ、歌舞伎はもちろん、他のお芝居でもこういう観客と隣り合わせになったことなんて一度もないから気になって気になってしょうがなかったの.漏れ聞こえる会話では、どうやら前にも見に来たことがあるっぽいし、一体どういうお子様達なんでだろう.基本的に子供嫌いだし、特に男の子なんて女系家族に育ったせいか未知の生物みたいで最も苦手なはずなのに、この兄弟はあの年齢にありがちな大声を出すでもなく、物静かにおしゃべり続けててすごく可愛かった.まさか男の子の兄弟を可愛いと思うことがあるなんて自分でもびっくり.


復活狂言.剣豪の話っていうから武蔵みたいに男臭い話かしらって思ってたら、前半は放蕩息子のだめっぷりに焦点が当たったちょっと世話物っぽい雰囲気の楽しい芝居、後半は一転、様式美たっぷりの立ち回りやら立ち合いやら渋い男の世界が繰り広げられ、一粒で二度おいしい芝居だった.
菊五郎さんの放蕩息子はだめっぷりがなんとも愛嬌たっぷりで憎めない.團蔵さんとのやりとりなんかは笑いの間が絶妙でほんとに上手い.菊五郎さんの可愛らしい面とキリッとかっこよい面の両方が見られるおいしい芝居だった.後半では、真っ暗な空間から舞台全体がいきなり紅葉の赤一色で彩られた天狗との立ち回りシーンが印象的だった.ああいうのはいかにも歌舞伎っぽくていいねー.
菊ちゃんは今回出番少なし.残念.天真爛漫で立ち回りまでしちゃうおてんばなお嬢様役で、舞台にぱーっと華を与えてた.新ちゃんと組んでると気にならない背の高さが今回ちょっと気になった.ヒロイン(?)は時蔵さん.菊ちゃんといい時蔵さんといい、2人とも色っぽいというよりは清廉な、どちらかといえば冷たい雰囲気を持つ女形なので剣豪の話にはぴったりだった.松緑さんは久しぶりに見たら声が良くなってた.團蔵さんや松助さんはいつものことながらいい味出して脇をしっかり固めてるし、渋い彦三郎さんにおおらかな田之助さん、ちょっと二枚目な信二郎さんなど役者が揃ったいい芝居でした.